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株式会社竹田技研

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騒音対策の基本

 機械の騒音が規格値を超えるなど、騒音問題が発生すると騒音を小さくする必要があります(騒音対策)。通常、騒音対策を実施する場合は、まず騒音源を特定し、その発生機構を見極め、その発生機構に応じて既存の騒音対策方法を適切に適用して騒音対策を行うことになります。

なお、騒音源の特定方法は、機械からの異音源の特定にも応用できます。

 より詳細には、騒音対策は概ね以下に示す①から④の手順で行います(図1)。ここでは、主に①から③までの手順について解説します。④については基礎的な内容を記載します。

 ① 騒音の観察と計測

 対象騒音の概要を把握し、対象騒音の特徴を分析する際に適当と思われる状態と場所で騒音を計測します。例えば、負荷を変える、回転数を変えるなど機械の稼働状態を変更できる場合は、これによって騒音源の特定に役立ちます。また、必要に応じて振動も計測します。

② 音源の特定

 音源が何であるかによって騒音対策方法が異なるため、音源が何であるかを特定します。計測した騒音のオクターブ分析やスペクトル分析を行い、収集した騒音・振動の特徴を把握します。

③   騒音対策方法立案

 騒音のどの周波数帯域をどの程度低減すれば目標値になるかを把握します。騒音源と必要減衰量が確定した後、騒音を低減するための騒音対策方法について検討します。

④     騒音対策実施         

図1 騒音対策手順

 ここで、騒音対策方法は以下の3つに大別されます。

 1) 音源対策

2)伝播経路対策

3) 受音者対策

  音源対策は騒音を発生している源(騒音源)に対策をする方法です。例えば、騒音源がギアであるとわかればギアの等級を上げて、ギアに起因する振動を低減させることにより結果として騒音を小さくすることなどがあります。

 一般に、音源対策は最も費用対効果の大きい対策です。しかし、汎用的な対策方法がなく個別に対応する必要があるため、機械の設計技術と騒音対策技術の両方が必要になります。そこで、技術者が両方の技術を持つか、複数の専門技術者が同時に対応しなければならないという課題があります。また、一方で音源の特定が難しいことなどもあり、音源対策の適用には壁もあります。

 伝播経路対策は吸音材などの騒音対策用の材料を使用して騒音を低減する方法です。例えば、機機械に防音カバーを施すなどがあります。一般に、伝播経路対策は費用がかかるものの、機械の発生する音のオクターブ分析を基に汎用的な対策を行うことができるため、音源を特定する必要がないこともあり多用されています。

受音者対策は、騒音が問題になる場所で騒音対策を行う方法です。この方法は費用対効果が小さいため、最後の手段といえます。

図2 騒音対策法の分類

 一方、現在使用されている全ての騒音対策方法には前提があり、その前提が成り立たないと効果がありません。このように、騒音対策方法には万能なものはなく、騒音問題毎に適切な騒音対策方法を選択し実装する必要があります。また、適切な騒音対策を行うためには、騒音や騒音対策方法に関する知識、問題となる騒音の特徴の把握が必要になります。例えば、騒音を小さくしたいときに、何も検討せずに吸音材を使用しても効果は期待できません。吸音材を使うことが適当と判断される場合でも、騒音を小さくしたい周波数が何Hz付近であるのか、何dB低減したいのかなどを考慮して対策を行う必要があります。一方、騒音対策方法は騒音の性質を利用して考案されたものであるため、これを適正に使用するためには騒音の基礎知識を習得することが必要です。

 次に、騒音対策方法を原理的な観点で分類すると、図3のように防音、吸音、防振、制振対策に分かれます。

図3 騒音対策原理

 防音は音波を跳ね返す対策方法です。室内の音は壁やドアを通して室外では小さくなります。壁やドアによって騒音が小さくなる原理は運動量保存則によります。図4のように、質量の小さい空気粒子(空気中の各成分ガスの総称とします)が質量の大きい固体に衝突しても、固体は空気粒子ほど振動しません。一方、室外の空気粒子は固体と同じように動くため、その振動振幅は小さい、すなわち室外での音が小さくなります。

図4 防音の原理

 吸音は音のエネルギの一部を熱エネルギに変換することにより音のエネルギを小さくする対策方法です。吸音材が存在すると、振動する空気粒子と吸音材との摩擦により音響エネルギの一部が熱エネルギに変換されます。このため、騒音が小さくなります。しかし、吸音材で機械を囲っても騒音は小さくなりません。吸音材は、壁などの防音効果のある部材に張り付けることで効果が出ます。

 防振は振動を跳ね返す対策方法です。例えば、機械をばねのような剛性の低い材料で支持すると、高い振動数では振動が機械の側へ反射し、床にはあまり振動エネルギが伝わらず床はあまり振れません。正確には、機械とばねで形成される1自由度振動系の固有振動数の数倍以上の振動数で防振効果が期待できます。

図5 防振の原理

 制振は、振動エネルギの一部を熱エネルギに変換することにより振動のエネルギを小さくする方法です。粘性の大きい制振材料を薄い板に付けることで、振動する制振材料が振動エネルギを熱エネルギに効率的に変換し振動を抑えます。なお、内部損失の大きい制振鋼と呼ばれる材料がありますが、この材料は通常の鋼と比較して内部損失が大きく、内部損失により振動エネルギを小さくするための材料です。しかし、制振鋼を床と機械の間に挟んでも防振効果は全くありません。それは、制振鋼は剛性が大きいため、振動を跳ね返す効果がないためです。このように、材料は適正に使用しなければ期待した効果は得られないので、注意が必要です。