独自の高性能識別技術

株式会社竹田技研

〒702-8057 岡山市南区あけぼの町25-5

受付時間
9:00~17:00
定休日
土曜・日曜・祝日
お気軽にお問合せください
086-259-0568

外観検査を行う際に、よく使用されているルールベース方式と比較して、StaVaTester方式を使用する優位性について示します。

検査画像の特徴

通常、工業製品には長さや重さなどにばらつきがあります。これと同様に、製品の外観にもばらつきがあり、その結果、検査画像にもばらつきが生じます。製品の長さや重さなどについては、平均値±3σ内にあれば良品といった、統計を使用した信頼性の高い評価基準がありますが、これと同じように外観検査においても統計解析が重要になります。

今、図1左の画像を考えると、画像を構成する各画素の明暗(濃度)の平均値とばらつきは、図1右のように各画素によって千差万別です。例えば、画素1の明暗は良品であってもある程度の違いがありますが、画素2は画素1と比較するとばらつきが小さいということがよくあります。

なお、モノクロ画像の濃度値は通常0~255の値を取ります。また、255は白に対応し、0は黒に対応します。中間値は灰色です。カラー画像では濃度値はRGB各色で0~255の値になります。

図1 良品画像と各画素の濃度範囲例

ルールベース方式の検査原理と問題点

ルールベース方式の外観検査では、1枚の良品画像の明暗値(濃度値)を基に良否の閾値を決定しています。具体的には、検査画像と良品画像の各画素の濃度値の差を取り、この差または差の絶対値が閾値以上の場合不良画素とします。

その後、隣り合った不良画素同士を塊(欠陥部)としてまとめ、その塊の画素数が閾値未満であれば良品とし、閾値以上であれば不良品と判定します。

なお、元画像をそのまま使用すると良品と不良品で差が出ない場合には、画像処理を施して差が大きくなるようにします。どのような画像処理をすれば良否差が強調されるかは、どの画像処理を選択するかにかかってきます。このため、適当な画像処理を選択するためには画像処理の基本を学習する必要があります。また、各画像処理には調整しなければならない変数がありますが、それらの変数がどの程度の値であれば適正かを決定するためには、深い画像処理の技術が必要になります。

しかし、統計量である画像の濃度値に対してこのような方法で良否を確実に判断することは原理的にできません。例えば、図2の様に、画素1の所に傷があり、その画素の良品と不良品の濃度差から閾値を決めるとします。しかし、良品テンプレートのその画素の値は平均値になることがまれで、例えば良品ぎりぎりの値であったとします。そうすると、この画素では傷の判定が正しくできますが、画素2や画素nのような状況が起こる可能性があり、良否が正しく判定できる保証はありません。例えば、画素2は基準にした良品画像の濃度値が上限ギリギリかつ濃度変化範囲が狭い場合で、不良画素を良画素と誤判定する例です。画素nは基準にした良品画像の濃度値が下限ギリギリかつ濃度変化範囲が広い場合で、良画素を不良画素とする例です。

これが、ルールベース方式では閾値を変えても変えても良否の判定がうまくできない原因の1つです。

図2 1枚の良品画像を基にした画素の良否判定

統計処理の原理と優位性

ところが、多数の良品画像を使用すれば、図3の様に画素の濃度値の平均値とばらつき(標準偏差)が明確になり、画素の良否が明確になります。例えば、検査画像の全画素の濃度が良品の平均値に一致した場合、このワークは間違いなく良品と考えることができるのではないでしょうか。また、全画素の濃度値が平均値±2σの範囲に入った場合も良品と判定するのが妥当ではないでしょうか。

このように、統計処理を行えば確実に良品であるものを選択することが可能で、半自動検査を可能にします。一方で、ルールベースの様に1枚の良品画像を基準にすると、検査画像が確実に良画像であるといえる保証はありません。

なお、半自動検査とは、検査装置でOK判定されたワークはそれ以上の検査をせず良品とし、NG判定されたものだけを目視検査する検査方法です。これにより検査の効率化が図れますが、無人化はできません。

図3 統計による画素の良否判定

良画素範囲の実例

StaVaTesterIIを使用して良画素範囲を調査した例を図4に示します。各位置で良画素範囲に大きな違いが見られます。また、色によっても違いが見られます。

なお、右下の画素は不良画素です。

 

図4 良画素範囲例

StaVaTester方式の検査原理と優位性

当社の検査原理であるStaVaTester方式では統計量である標準化変量(検査画像の各画素の濃度値から同じ位置の良品の画素の平均濃度値を引いた値を同じ位置の良品の画素の標準偏差で割った値)を使用して検査をしているため、上記の処理を行っていることに相当し、各画素の良否を安定的に判断することが可能になります。

ところが、これまでも統計処理を使用する方法がありますが、自動検査では実際に使用されていません。これは、統計解析により各画素の良否判定はできても、画像全体としての良否(ワークの良否)を判断する方法がなかったためです。例えば、全ての画素の濃度が平均値±3σ以内であれば良品、そうでなければ不良品と判定する方法が考えられますが、このような簡単な方法では正確に良否を判定できないことが分かっています。

そこで、StaVaTesterIIでは新規に開発したパターン認識技術を使用して画像全体の良否を判定することを可能にしています。

以上のように、画素の良否を統計処理により解析し、その結果を新規に開発したパターン認識技術により画像全体の良否を判定することで、StaVaTesterIIは安定な検査を可能にしています。

 

数式による比較

次に、数式を使用して2つの方法を比較します。

ルールベース方式は図5のように、ある点の濃度値(xi)と良品の濃度値(Xi’)の差を取り、この差の大小で画素の良否を判定します。ただし、場合によっては数枚の良品画像の平均値との差を取ります。

一方、StaVaTester方式ではある点の濃度値(xi)と多数の良品画像を基に計算した平均濃度値との差を取り、その値を標準偏差で除した値(標準化変量)を基準して画素の良否を判定します。多数の良品の平均値との差を計算することと、ばらつきの度合いを示す標準偏差でその差を割ることにより、ばらつきによる悪影響を抑制する効果があります。

図5 数式による方法の比較